大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪家庭裁判所 昭和32年(家)1121号 審判 1957年4月09日

申立人 松田ヨシヱ(仮名)

事件本人 未成年者 松田雅一(仮名)

松田正司(仮名)

主文

未成年者両名の後見人に申立人を選任する。

理由

申立人提出にかかる大阪地方裁判所昭和三一年(タ)第二号離婚事件判決謄本に依れば同裁判所が同年一一月二七日申立人と松田正夫とを離婚しこの両名の間の子である長女友子及び未成年者両名の親権者を申立人と定める旨の判決言渡をなし、この判決は昭和三二年一月三日確定したこと明であり、一方申立人の戸籍謄本に依れば、申立人は昭和一六年六月○日韓国人松田正夫と婚姻してその家に入つたもので、上記判決確定によつて離婚の効果を生じ、その家を去つたことも明である。

そこで韓国人たる未成年者両名の親権者の点につき考えると、法例第一六条第二〇条により韓国法を適用すべきところ、韓国に於てはその独立後身分法に該当する新立法なく、応急的に今尚日本国旧民法が適用されていること当裁判所に顕著である。その第八七七条によれば子はその家に在る父の親権に服するのであるから、上記判決に於て慣習法には定めなきものとして条理を適用し申立人を親権者として指定したことは法令の適用に違背があつたものというべく、従つてこの判決において未成年者両名につき申立人が親権者に指定されたとは言え、離婚により家を去つた申立人が未成年者両名に対し親権を行使することは許されず、未成年者両名は依然家にある父松田正夫の親権に服すべきものである。ところが上記判決に依れば同人は朝鮮動乱以来消息なく、生死も不明であるから親権を行うことができず、爾後未成年者両名に対し親権を行う者がなくなつたわけである。次に法例第二三条に依ると、後見は被後見人の本国法に依るが、未成年者両名のごとく日本に住所を有する外国人の後見は本国法に依れば後見の事務を行う者のないときには日本の法律に依るのであるから、我が民法第八三八条を適用し申立人を未成年者両名の後見人に選任するを相当と認め主文のとおり審判する。

(家事審判官 沢井種雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例